朝日信用金庫

谷中の街を、古民家から元気にする。

台東区・谷中。歴史ある建造物が数多く残るこのエリアに、2018年、古民家カフェが新たにオープンしました。「八代目傳左衛門めし屋」の青い暖簾をくぐると、どこか懐かしいけれど新しい、心地の良い空間が広がっています。このお店の開業を支援したのが、朝日信用金庫が発起人となった「谷根千まちづくりファンド」。なぜ、街の信用金庫が古民家再生事業に乗り出したのか。この取り組みの仕掛人、お客さまサポート部の執行役員部長である、竹尾伸弘さんと、「八代目傳左衛門めし屋」のオーナー企業であるイノーバー・ジャパンの代表取締役、吉田瞳さんに話をお聞きしました。

朝日信用金庫

お客さまサポート部 執行役員部長竹尾 伸弘

有限会社
イノーバー・ジャパン

代表取締役吉田 瞳

※店主、加賀谷恵さんは産休中のため、
今回は姉の吉田瞳さんにお話をいただきました

「谷根千
まちづくりファンド」
設立のきっかけは?

朝日信用金庫/竹尾これまでも私たちは事業主体で、地域へのご支援を行っていました。一方で、その街の特色に根ざしたご支援にまでは、手が回っていなかったのです。そんな時に、谷中の街に今も数多く残る古民家が相続などで土地ごと手放され、失われている現状を知りました。古民家は、古くからある地域の貴重な文化資源。その再生を行っている団体の方と出会って、自分たちにもできることがあるのではないかと思ったのがきっかけです。
共同事業者となったのは、地域の金融機関と一体になって「まちづくりファンド」を設立している一般財団法人MINTO機構です。長年、民間の都市開発を支援している彼らの協力を得たことで、ファンド設立に向けて一気に話が動き出しました。朝日信用金庫としては初めての試みですから、最初は試行錯誤が続き、設立にいたるまで約1年半ほどかかりました。

イノーバー・ジャパン
との出会いは?

朝日信用金庫/竹尾ファンド設立の準備が整った頃、タイミング良く地域団体の紹介で出会ったのが、イノーバー・ジャパンさんでした。

イノーバー・ジャパン/吉田氏(以下敬称略)谷中エリアに出店計画はあったものの、十分な資金がないことを相談していた直後に、朝日信用金庫さんをご紹介いただいて、こちらとしても非常にタイミングが良かったです。朝日信用金庫さんとは、その時はまだお取引はなかったものの、上野や御徒町、浅草など、どこにでも支店があるので名前は存じ上げておりました。地域のお祭りや商店街のイベントにも協賛されているのを知っていたので、“街に根付いた信金さん”というイメージがありました。いつかはお世話になりたいと思っていたので、このような形でお付き合いができて、本当に嬉しい限りです。

朝日信用金庫/竹尾我々の方こそ、嬉しい限りです。イノーバー・ジャパンさんはすでに谷中で古民家を再生したビアホール「谷中ビアホール」を経営されていました。最初の商談で「谷中ビアホール」にお伺いしたのですが、昼間の時間帯にもかかわらず、たくさんのお客さまで賑わっていて。観光客だけでなく、ご家族連れやベビーカーを押した若いお母さんなど、地元のお客さまからも愛されているのがすぐわかりました。

投資の決め手は?

朝日信用金庫/竹尾イノーバー・ジャパンさんと最初にお会いしたタイミングで「これはいける!」という確信はありました。事業を立派にやっている。事業計画もしっかりある。そこはもちろん信頼をしていたのですが、我々としても裏付けは取らなければなりません。一点気がかりだったのが、一食あたりの和定食の値段が、1100~1300円の価格帯だったことでした。そこで、その金額で果たして谷中エリアで戦っていけるのか、独自に調べてみることにしました。
インターネット上にも様々な情報はあったものの、谷根千エリアのみを対象とした調査結果は見当たりませんでした。それなら歩いて回った方が早いと、足を使って調査を開始しました。お店をのぞいて、値段を確認するだけで帰ろうとしたところ、「いらっしゃいませ」と声をかけられて、食べざるを得なくなったこともあります(笑)。一週間で回ったのは二十数店舗。自分で調べたことで、価格の妥当性が分かりました。さらに、実際に歩いて気がついたのは、日暮里駅から谷中霊園を抜けて、上野方面までの観光客がよく歩くコースに、ご飯を食べられるところが意外にも少なかったことです。最初に抱いた「いける!」という確信に自信を持つことができました。

出資時期、開業時期は
いつ頃でしたか?

朝日信用金庫/竹尾はじめてイノーバー・ジャパンさんにお会いしたのが、2017年の年末。その後、トントン拍子で話がまとまって、約3ヵ月後の2018年3月末にはファンドを設立することができました。そこから2ヵ月後、5月末に出資をさせていただき、7月にお店がオープンしています。

イノーバー・ジャパン/吉田最初にお会いしてから半年ちょっとで開業できたのも、スムーズに投資のご判断をいただいたからです。新規の出店を考えている企業にとって、金融機関のスピード感あるご対応は、とてもありがたいです。朝日信用金庫さんとご一緒できたことで、早々に資金面での問題をクリアにし、開業準備に集中することができました。

開業後の状況は、
いかがですか?

イノーバー・ジャパン/吉田ありがたいことに出店から半年くらいで単月黒字化を達成できるようになりました。人通りの多いところに出店できたこと、価格帯もフィットしていたことが、きっと良かったのだと思います。近くにお勤めの方など、固定客も多くいらっしゃいます。

朝日信用金庫/竹尾創業当初から、いきなり予定通りの収益をあげるのは難しいことです。そんな中で、非常に順調に経営を伸ばされている印象です。当初の計画とは多少違う部分もありますが、利益は当初の想定以上に出ているのではないでしょうか。
さらに当庫にとってもありがたかったのは、「谷根千まちづくりファンド」の取り組みが、さまざまなメディアに注目されたことです。多くの方に当庫のことを知っていただくきっかけになりました。何よりも、私自身が嬉しかったのは、「谷根千まちづくりファンド」を通して、我々信用金庫の潜在能力を、再認識することができたことです。もともと朝日信用金庫が根を張っているエリアに、古民家という文化資源がたくさんあったように、人とのつながりなど、地域との絆も含めて、我々にはポテンシャルがあります。街の金融機関としてできることが、まだまだあるのだと改めて気づかせてもらった気がします。

これからの展望は??

イノーバー・ジャパン/吉田「谷中の人たちに愛されるお店にしたい」という想いは、出店を決めた時から変わりません。地域の方が、毎日行きたくなるようなお店になるのが理想です。また、観光客にとっても、この谷中の街をさらに好きになるきっかけの一つに当店がなれたら、と思いますね。

朝日信用金庫/竹尾「谷根千まちづくりファンド」の取り組みは、今後も継続的に行っていくつもりです。また、谷根千で行ったような地域活性の取り組みを、今後ほかのエリアでも展開していきたいと考えています。上野や浅草、神田、神保町など、エリアごとに特色のある街が、朝日信用金庫のテリトリーにはたくさんあります。その街、その地域に、どんなご支援ができるのか、地域の方々と一緒に、これからも引き続き考えていきたいと思っています。

*掲載内容は、インタビュー当時(2019年8月)の内容です。

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