朝日信用金庫

若手の自由な発想が、DXの可能性を切り拓く。

国内の金融機関で初めて国税関係書類の電子化保存を実現したのを皮切りに、積極的にデジタル技術を活用し、管理書類のペーパーレス化や、営業店職員の業務効率化を進めてきた朝日信用金庫。さらにデジタル化を推進していくために、このほど、デジタル戦略部が発足しました。どんな狙いがあり、どんな構想を描いているのか。DX推進の立役者であり、デジタル戦略部を率いる三澤副理事長にお話をお聞きしました。

朝日信用金庫

副理事長三澤 敏幸

これまでのデジタル化の
取り組みと、
その成果について
教えてください。

私たちは平成30年に国内の金融機関で初めて国税関係書類の「保管レス」というものを実現しました。成果としては、毎日発生する帳票や伝票、月間約32万枚を電子化することができ、保管スペースの削減や調査時の時間短縮などの効果を得ることができました。それ以来、様々な管理書類のペーパーレス化や書類の多い融資の電子契約など、デジタル化には積極的に取り組んでいましたが、一気に加速したのは、このコロナ禍。わざわざ印鑑をもらうために出社するのは非効率なわけです。そこで一気にデジタル化を進めて、今では全体の9割がペーパーレスで運用できるようになりました。同時に、リモートでの営業活動を実現するために新しいシステムを導入し、全営業係にタブレットPCを配布しました。セキュリティ面での難しさから、金融業界のリモートワークにはやはりハードルがあった。ここまで取り組んでいる信用金庫は珍しいと、コロナ渦におけるDX の取り組みをNHKにも取り上げられたんですよ。やはりここまで徹底すると、業務効率やスピード感が全く違うということを、我々も実感しました。

デジタル戦略部を設立し、
公募でメンバーを集めた
狙いを教えてください。

ここ数年でデジタル化の道筋はできてきましたが、私を含め、一部のメンバーだけで進めるのには限界がある。とにかく若い人たちの力を吸い上げよう、というのが当初の狙いです。これからデジタル技術を活用した金融機関の競争は一層激しくなっていくはず。そのなかで朝日信金としてどんなサービス、どんな商品をお客さまに提供できるか。ここに、若い自由な発想がほしい。専門知識よりも、素人発想が一番大事だと私は思います。現在、業務改革プロジェクトの一環で、営業店と本部の職員が一緒に特定のテーマを検討する「意見交換会」を開催していますが、現場でお客さんにこう言われた、こうした方がいい。そういった意見はみんな持っている。現場をよく知る若いみなさんから、積極的にアイデアを出してほしいんです。本部のメンバーにお願いしているのは、「そんなの無理だよ」と否定から入らないこと。もちろん突拍子もないアイデアもあるでしょうが、まずは受け入れてほしい。入社2年目や3年目の若手が、課長クラスの人から「無理だ」と言われてしまうと萎縮してしまいます。そうならないような雰囲気づくりも重要ですよね。

今まさに
取り組んでいることは
なんですか?

今は職員のための公式のLINEアカウントをつくり、開設してからまだ日が浅いですが、ほぼ全ての職員が登録していますね。たとえば「福利厚生」について知りたければ、ここを見ればいいし、災害時の「安否確認」もここで完結できてしまう。開発の主担当は、入社4年目や5年目の職員。やっぱり若い人たちが使うものですから、若い人たちにつくってもらうのが一番。今後は、お客さま向けのポータルサイトも作ります。お客さまの情報を蓄積し、データを分析することで、営業効率を高めることもできるでしょう。より確度の高いお客さまにDMを送る、といったことにも取り組んでいく予定です。

国内初・信金業界初の
取り組みが
たくさんあります。
DXをここまで
推進することができた
背景はなんですか?

やはりスピード感でしょうか。ペーパーレス化に着手した時も、数ヵ月で一気に伝票をデータ化して、不要になったものは廃棄をしました。その指示を最初に出した時は、もうクレームの嵐。あの当時、職員を全員敵に回したかもしれません(笑)。でも、スピードが何より大事だと考えていました。もし10年スパンでやっていたら、ここまで効果を体感できなかった。1~2年でここまで変わるんだ、という成功体験が必要だと思ったんです。他の金融機関の方にも「なんでこんな短期間でできたのか?」とよく聞かれます。やはり、一気にやらないと効果を感じにくいし、感動もしない。人は感動しないと新しいものを使わないと思うんですよ。

今後の展望を教えてください。

さらに収益を盤石にしていくために必要なのが、デジタルと対面、Face to Faceのハイブリット。ここに本気で取り組もうとしています。私たちの業務はFace to Faceが基本。お客さまを知ることが非常に重要です。対面での情報収集はもちろんのこと、データを活用し、お客さまの情報をよく分析することで、対面とは別の角度から、さらに広く深くお客さまを知ることができると考えています。そのため、データ分析にも力をいれていき、DXを通じて地域のお客さまのお役に立てるような仕事をしていきたいと考えています。

DX取り組み一覧

  • 国税関係書類電子化

    入出金伝票画像と取引データをひも付けるシステムを開発し、国税関係書類の電子保存を実現(国内金融機関で初)。約2720万枚の書類を削減し、紛失リスク軽減や保管スペースの有効活用に成功。

  • 住宅ローン・事業性融資 電子契約サービス

    自宅のPCやスマホからいつでも住宅ローン契約手続きができる電子契約サービスを信金業界で初めて開始。さらに事業性融資にも同様の電子契約サービスを拡大。

  • 営業支援システム

    信金業界で初めて、内部API(データ連携の接続仕様)搭載タブレットを営業職員に配布。顧客の取引履歴やニーズ情報などを訪問先で確認できるほか、各種契約手続きなどを電子化。在宅勤務も可能に。

  • オンライン会議システム

    営業担当のタブレット端末にweb会議システム「Live on」を搭載。訪問先から直接、専門部署と接続し、投資信託や事業支援などの詳細な相談が可能。

  • 制度融資(信用保証)の電子化対応

    信用保証の申込みから信用保証書の発行までweb上で完結できる電子受付システムを国内で初めて導入。融資申し込みから実行まで約5日間短縮し、手続きの迅速化・事務負担軽減に成功。

*掲載内容は、インタビュー当時(2022年10月)の内容です。

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